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10月12日、リニア中央新幹線についての見解ー「深刻な問題が多発するリニア新幹線工事ーこのまま突き進んでいいのか?」

深刻な問題が多発するリニア新幹線工事――このまま突き進んで良いのでしょうか?

日本共産党三重県委員会のリニア中央新幹線についての見解

              2022年 10月  日本共産党三重県委員長 大嶽隆司

                         日本共産党三重県会議員 山本里香           

 

日本共産党は、交通手段近代化については反対しませんが、リニア中央新幹線建設については、その必要性、採算性、安全性、環境影響など問題が多すぎ、決して賛成することができません。

2022年9月6日、三重・奈良・大阪の三知事が出席してリニア中央新幹線促進大会が四日市市で開かれ、リニア中央新幹線計画の名古屋以西について、来年度中に環境影響評価の手続きに着手し、駅位置やルートも早期に確定させるよう国とJR東海に要請することを決議しました。これは、政府が本年6月にまとめた「骨太の方針」で来年から環境アセスメントに着手できるよう沿線自治体と連携すると明記したことに呼応したものです。

また、一見勝之三重県知事は、三重県の総合計画「みえ元気プラン」で、リニア中央新幹線計画に沿って建設残土の処分用地や用地買収などの準備を進めるとし、政府とJR東海の動きに率先して協力することを表明しています。

しかし、リニア中央新幹線は、東京―名古屋間の工事は着工されましたが、この中でも深刻な問題が次々と浮かび上がっています。採算の見通しが立たず国民に多大な財政負担や既存の鉄道サービスの切り捨てをもたらす恐れが大きくなっています。三重県にとっても、中間駅周辺の開発などの地元負担が住民サービスと自治体財政を悪化させ、水や残土をはじめ様々な環境問題を引き起こす危険があります。

1、採算性の見通しが崩れるリニア中央新幹線――多大な国民負担やJR東海の経営危機による既存鉄道サービスの切り捨て・劣化をもたらす危険が大きくなっています

(1)過大な需要予測に基づく新幹線増設計画であることがはっきりしています。

 リニア中央新幹線建設は、2011年に国土交通大臣がJR東海に「建設指示」を出し、その後、安倍政権が「国家的プロジェクト」と位置付け、財政投融資など公的資金も投入する仕組みもつくり、東京―名古屋間の工事が開始されました。この計画は、“2045年には東海道新幹線の利用者数が1.5から1.8倍になる”という、当時でも無謀と思える「需要予測」が前提になっています。しかも、IT技術の進歩とコロナ危機もあり、テレワークやオンライン会議が広がるとともに、人口減少と経済の低成長という基本的な問題もあり、こんな需要予測が達成できるメドはありません。こんな無謀な見通しで巨額をつぎ込めば、そのツケは多大な国民負担となってしまいます。事業者であるJR東海の経営危機は、在来線や東海道新幹線のサービス切り捨てや運賃値上げにつながる危険をもたらします。

(2)工事費は膨張し続けています。

 東京―名古屋間で5.54兆円とされていた工事費は、すでに1.5兆円膨らんで7.04兆円になっています。これまでも大型開発は、着工後に工事費がどんどん膨れ上がるというのが「通例」でしたが、リニア建設は、南アルプストンネルなどの難工事が多いうえに、建設資材の高騰もあり、これまで以上に工事費が膨張する危険に直面しています。

 しかも、工事の遅れが相次ぎ、「2027年開業」という目標は不可能といわれる状況です。南アルプストンネル着工の見通しもたたず、東京と名古屋で起きている大深度地下トンネル工事のトラブルによる中断、神奈川の車両基地の用地買収の遅れなどが重なっています。工事の遅延が工事費をさらに膨張させようとしています。

(3)国交省は、一方で、“新幹線も含めて利用者はコロナ前に回復しない”という見通しのもとに、全国の地方路線を大規模に廃止にしていく方向を打ち出しています。

 国交省の「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」が8月に提言を発表し、国交大臣は提言に基づいて、地方路線の大規模な廃止、あるいは地方負担増(運賃値上げや自治体からの財政支援)に踏み出す意向を表明しています。この提言は、新幹線や都市部の路線でも「アフターコロナにおいてもコロナ以前の利用者数まで回復することが見通せず、事業構造変化が必要」として、地方路線の廃止や地方負担増をすすめる方向を打ち出しました。

新幹線や在来線は都市部も含めて乗客数は減少するとしながら、リニア新幹線は今後も大きく増えるというような無謀な計画は成り立たちません。リニア新幹線の建設を強引にすすめることは在来線の廃止や値上げに拍車をかける危険が大きいことは、この国交省の「提言」からも明らかです。

2、三重県の交通利便性の向上にはほとんど結びつかず、経済効果も期待できません。逆に、在来線、ローカル線の切り捨て・サービス低下・運賃値上げをもたらす危険と多額の財政負担が三重県行政に押しつけられます。

 リニア新幹線は、三重県内を通過する計画ですが、亀山中間駅をつくっても県民や観光客、ビジネス客の利便性向上にはほとんど結びつきません。

すでに着工している東京―名古屋間の中間駅は、町はずれに設置され、在来線との「乗り継ぎ」もできません。中間駅の設置場所は、東京―名古屋―大阪を最大限直線的に結ぶ路線上に限定されるためです。地域の実情や在来線との「乗り継ぎ」など「高速・直線」の邪魔になるものは考慮されません。

 そのために中間駅周辺の開発、街の中心部からのアクセス道路や公共交通の整備、駅機能の強化(JR東海の計画では中間駅は切符の販売もせず、待合室も売店もない)などの地元負担が大きくなります。実際今計画の亀山中間駅の3案は、いずれもJR亀山駅から遠く、かえって高速道路に近い案が、有力といわれています。

そして、岐阜県駅の中津川市では、「リニア駅周辺整備」に約400億円もの計画になっています。

こうした多額の地元負担をしても、多くのリニア利用者にとって、在来線との接続もない亀山中間駅に行って1時間に1本程度の各駅停車に乗車するより、在来線や近鉄で名古屋に出て乗り換える方が速く便利になります。多額の地元負担が三重経済の活性化どころか重荷になりかねないのです。

 一方で、前述のように、リニア新幹線に巨額の資金をつぎ込みながら、「予定された」乗客を確保できないことで、そのつけが在来線、ローカル線の切り捨てや運賃値上げに向かう危惧の方が、三重県民の交通にとって重大です。

 出典リニア新幹線路線予定画像

3.第2の公害問題―残土問題、水問題、地盤崩落、騒音・振動などの環境問題が、解決できるのか?

 リニア新幹線が環境に与える最大の問題は、エネルギー浪費型の交通システムだという点です。リニア新幹線の電力消費は東海道新幹線の3~4倍と言われており、気候危機打開のために不可欠である省エネルギーにまったく逆行しています。

 同時に、東京―名古屋間の工事で、残土問題、水問題、大深度地下工事による地盤崩落、騒音・振動などの様々な環境問題が引き起こされています。工事の継続は不可能と言える状況であり、これを無視して大阪延伸の着工を急ぐことは許されません。

山梨実験線周辺でトンネル建設による水脈切断・水枯れが既に発生しています。南アルプスの環境・生態系が地下水位低下により大きく変化することや大井川の水量の大幅減少・枯渇も指摘されています。また、地盤凝固剤による地下水汚染の恐れもあります。名古屋―大阪間ルートにおいてもトンネル建設による地下水への影響が懸念されます。

 トンネル掘削に伴う残土の処分、管理・処理をめぐる問題が沿線の各地で持ち上がっています。土砂の処分地容量の不足、残土の積み上げによる土砂災害の危険、ヒ素、フッ素、ウランなどの有害物質を含んだ土砂の処理と管理、さらには、トンネル崩壊事故や大深度法を利用したトンネル掘削による地盤陥没の恐れなど、トンネル工事に伴う様々な問題が起きています。

とくに、リニア路線上、四日市市などは、市街地をとおり、大深度法で40メートル以下の地下トンネルになれば、扇状地の中の工事の困難さ、市民への大きな水問題の影響が懸念されます。四日市市の地形は西側には鈴鹿山脈から続く丘陵部が広がり、そこから伊勢湾に向かって平地が広がっており、平地には朝明川・海蔵川・三滝川・内部川・鈴鹿川などにより形成された扇状地と川からの堆積物により形成された沖積平野となっています。

地質的には大変弱い地域で、濃尾地震、東南海地震共に液状化現象が生じており、「三重県地質被害想定調査 液状化危険予想分布図」においても「危険性が極めて高い」とされています。土地表層分類図によると、四日市市街地・沿岸部は砂層と泥層である。一般住宅建設の際には土壌改良を余儀なくされ、市街地部分で高層マンションやビルが建設されているが、工事中には地下水が流出し続けます。市総合会館の支持杭は45メートルもあります。

 さらに、伊勢湾に向かって断層が存在、津波浸水地域でもある。危機管理上の問題に加え、工事による地下水脈の寸断、地盤沈下についての影響は、市街地から沿岸石油コンビナートにまで及ぶと考えられます。市民生活と産業経済活動に関わる大きな問題となることは否めません。

地上ルート部分の沿線住民には高速走行に伴う騒音・振動の不安もあります。

 また、強力な磁石の使用に伴って生じるリニア車内の高磁場や高圧送電線と変電設備周辺での強い電磁波の発生が人体に与える影響についてもまだ解明されておらず、懸念されています。

4.迫る大災害の危険―地震の危険地帯を通る名古屋―大阪間ルート

 南海トラフ地震の理論上最大クラスが発生した場合、伊勢湾沿岸部の広い範囲で震度6強~7の激しい揺れが想定されています。また、名古屋―大阪間にはいくつもの活断層帯があり、リニアのルートはこれらを横切ることになります。この内の一つである養老―桑名―四日市断層が動いた場合には、広い範囲で震度7が予想されています。このため、三重県の伊勢湾沿岸部をリニア新幹線のルートに選択すること自体が無謀であり、三重県の伊勢湾沿岸部を避けるのが科学的で合理的な選択です。元々、JR東海は東海地震対策としてリニアを東海道新幹線のバイパスと位置付けるとの説明を行っていました。南海トラフ地震対策の代替路線であれば、震度6以上が予想される地域をルートから避けて当然です。名古屋―大阪間に関しては検討中のリニアのルートより現在の東海道新幹線の方が南海トラフ地震の震源域より離れており、相対的に安全です。長野新幹線と北陸新幹線こそ、南海トラフ地震対策の東海道新幹線の代替路線です。

現在、日本列島は地震活動期のただ中にあり、南海トラフ地震は切迫しています。また、伊勢湾沿岸部は広い範囲にわたって軟弱地盤の地域です。大地震によってトンネルの損傷や崩壊が起きた場合、出水も予想され地下深くからの脱出は困難を極めますし、余震によって救助隊の派遣も難しいと思われます。大地震が発生すればリニアの乗客に多数の犠牲者が出るリスクが高い地域であるにもかかわらず、リニア中央新幹線建設促進三重県期成同盟会が三重県内にリニアを熱心に誘致しているのは極めて無責任です。

出典・気象庁

  出典・気象庁

以上指摘した問題点は、いずれもリニア中央新幹線計画の根本に関わるものです。日本共産党三重県委員会はリニア中央新幹線計画の中止を求めます。

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